公益社団法人 精密工学会
成形プラスチック歯車研究専門委員会
Technical Committee on Molded Plastic Gears

 

平成24年度 騒音小委員会活動報告

 

小委員長 扇谷 保彦

幹 事 加田 雅博

 

 

(1)会議・打ち合わせ等の実施状況
  第37回騒音小委員会 平成24年11月30日,於 品川イーストビル, 出席者7名
    ・2011年実施のアンケート調査結果の詳細分析(クロス集計)について議論
    ・ポリアミド歯車の膨潤が及ぼす影響等について検討
    
 
(2)調査・研究等内容
(2-1)プラスチック歯車の動向調査結果の詳細分析
ワーキングチームとして騒音小委員会が実施を担当した「プラスチック歯車の動向調査」で得られたデータに対 し,クロス集計による更なる詳細分析を試みた.
 クロス集計結果の一例として,図1にプラスチック歯車関連技術開発の方向性に関する業種別傾向を示す.
図には,自動車関連メーカーは低騒音化,伝達トルク向上,耐熱性向上に関する技術開発に注目しているのに対し,それ以外の企業は精度向上,コスト削減に関する技術開発に注目していることが示されている.このようにクロス集計は業種別の回答傾向などを見出すことに有効であると考えられるが,残念なことに今回の調査では十分な数の回答が得られたとは言い難く,クロス集計で細分化すると該当する回答の数がさらに少なくなる為、 クロス集計結果から関連業界全体の傾向を判断するのはやや無理がある.このため,ワーキングチームとしては追加の詳細分析の実施を断念し,次回の調査の際に留意すべきことなどを申し送り事項としてまとめ,今回の調査活動を締めくくることにした.

(2-2)ポリアミド歯車の膨潤が歯車精度および騒音発生に及ぼす影響についての検討浸漬による加速試験でポリアミド歯車の膨潤が歯車精度に及ぼす影響について調べるとともに膨潤した歯車の運転試験を実施し,膨潤が騒音発生に及ぼす影響を調べた. 
 真水(水道水,水温20〜28℃)に浸漬し,膨潤させたポリアミド平歯車(モジュール5,圧力角20°,歯数40,ピッチ円直径200mm,歯幅20mm)の歯形,歯すじの変化を図2に示す. ポリアミド歯車は,浸漬時間にはぼ比例して膨潤が進行し、 歯形に圧力角誤差を生じた.歯すじに関しては,膨潤の進行に伴い,端面付近に膨らみを生じた.
 図3に吸水率の変化に伴う全歯形誤差の変化を示す. 吸水率の増加(膨潤の進行)に伴って,全歯形誤差(圧力誤差)が増大した.また,歯形は,歯幅中央部(10mm)と端面に近い箇所(5,15mm)でほぼ同様に変化した.
 吸湿・膨潤により,図2に示されている試験歯車と同様の歯形誤差を生じたポリアミド歯車(TG9902)および比較的膨潤が進行していないポリアミド歯車(TG0502)をそれぞれ同一の鋼歯車と組み合わせ実施した運転試験における騒音の音圧レベルを図4に示す.図は膨潤によるポリアミド歯車の歯形変化は歯車騒音を増大させるが,騒音が増大するのは比較的低負荷での運転時に限られることを示している
 以上,プラスチック歯車としては比較的大モジュールの平歯車を対象とした検討結果を述べた.今後は膨潤の影響をより受けやすいと考えられる小モジュールのポリアミドはすば歯車を対象として膨潤が運転性能に及ぼす影響を調べる予定である.

                                                                 
 
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