[付録:B]
Gear Navigation System によるホーニングシミュレーション

B1. はじめに
  ホーニング加工において被削歯車と異なる諸元のドレスギヤや,バイアス修整等の複雑な修整を施したドレスギヤを使用する場合があるが,正確に歯形が加工されるか否かは実際に加工してから検査をして判断しているのが現状である.
  今回,被削歯車と諸元の異なるドレスギヤを用いたときの歯形 をGear Navigation System でシミュレーションした結果を報告する.

B2. Gear navigation system の概要
  Gear Navigation Systemは,ホブカッタ,ピニオンカッタ,シェービングカッタ,ホーニングの各工具による歯車加工形状解析と,そのかみ合いのシミュレーションをすることができる.また,データベースによる工具管理機能を有し,条件に見合う工具を共用計算することにより検索することができる.
  歯車加工シミュレーションは,歯面,歯元,歯先,面取り形状と各数値の計算,特にホーニングでは,歯形修整,歯すじ修整,歯面修整後の形状を解析しグラフ表示することができる.更に,かみ合いシミュレーションでは,加工後の歯形をかみ合わせて歯当たりを観察することができる.図B.1にGear Navigation Systemの画面を示す.


B3. 加工手順
  被削歯車は,モジュール2.5,歯数15,圧力角20°,ねじれ角30°のはすば歯車であり,歯車をホブ切削後にホーニング加工を行うものとした.ホーニング用砥石ドレス用のドレスギヤの歯数を,被削歯車と同じ15枚(ドレスギヤS)の場合と,歯数を29枚(ドレスギヤK)とした場合のシミュレーションを行う.
  ドレスギヤにはS,K ともに同じ歯面修整を与えホーニング砥石をドレスした後にホーニング加工した.

B4. 歯車とドレスギヤ諸元
  被削歯車の歯車諸元を図B.2に,ホブ諸元を図B.3に示す.加工時の歯厚は,図B.4に示すようにホーニング仕上げ代は,またぎ歯厚で0.1mm とし,ドレスギヤSおよびKには図B.7の歯面修整を与えている.


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B5. ホーニング砥石諸元
  ホーニング砥石の諸元は79歯の1種類のみであるがドレスギヤが2種類あるためドレスギヤの軸間距離に違いがある.砥石の諸元とドレスギヤ(S,K)とホーニング砥石をかみ合わせた場合の数値表を図B.8および図B.9に示す.なお,図B.8 および図B.9の軸間距離(ドレスギヤ)は,ねじ歯車のかみ合いを基準に計算した値を採用している.


B6. ホーニング加工後の歯形(修整量)
  ホーニング加工後の被削歯車の歯形グラフを図B.10~B.17 に示す.歯形グラフは,トポグラフの全階層の表示が可能であるが,今回の評価では1,3,5 階層の歯形誤差を比較した.
  ドレスギヤ(S)(K)に同じ修整量を与えてもドレスギヤの歯数によりホーニング後の歯形修整量に差が発生することが解る.表B.1 は被削歯車と同じ諸元を持つドレスギヤを使用してホーニング加工した結果であり,この場合は,ホーニング加工後の歯形とドレスギヤ(S)の修整量はほぼ一致している.しかし,ドレスギヤ(K)では,表B.2 に示すようにドレスギヤ修整量の80%程度が被削歯車の修整量となる.


B7. 歯形シミュレーション
  ホブ加工~ホーニング加工までの歯形シミュレーションを図B.18~B.27に示す.図B.28および図B.29は,ホーニング代を1μmとしたときの歯形レンダリングであり,接触線が顕著に現れている.


B8. まとめ
  被削歯車とドレスギヤを同じ諸元とした場合とドレスギヤの歯数を約2倍とした場合についてシミュレーションした.
  その結果,同一諸元の場合は,ドレスギヤの修整量がそのまま被削歯車に転写されているが,歯数を約2 倍にした場合にはドレスギヤに与えた修整量の約80%が転写された結果となった.
  本ソフトウェアでは,諸元を任意に変更してシミュレーションすることが可能であるため高価なドレスギヤの諸元および修整量の決定に有効であると考えている.

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