5. Planetary gear and Mechanical paradox gear
    design system
(遊星&不思議遊星)


5.1 概要
  Planetary gear and Mechanical paradox gear design systemは,2016年12月に操作性や画面表示など改良した「Planetary gear design system」に変わりました.本ソフトウェアは,遊星歯車と不思議遊星を簡単に設計できるソフトで,歯数の組み合わせや中心距離などを自動決定し,歯車寸法および歯車強度を簡単に設計することができます.また,遊星歯車の干渉チェックおよび,転位係数の決定,効率計算なども簡単に計算することができます.図5.1に計算結果の全体画面を示します.

5.2 適用
(1)型 式      :等配置型
                 :遊星(プラネタリ,ソーラ,スター)
(2)歯車材料 :金属,樹脂(金属と樹脂混同可能)
(3)歯車歯形 :インボリュート歯形
(4)オプション :不思議遊星(3K),少歯数,ダブ
                   ルピニオン,不等配置
上記,遊星歯車の歯車寸法,歯車強度,歯形設計に適用します.

5.3 プロパティ(基準ラック)
  プロパティで,歯先円直径の決定方式,基準ラック,モジュールまたは中心距離基準,歯車精度,摩擦係数の設定をします. 図5.2にプロパティの画面を示します.


5.4 遊星歯車機構の選択
  図5.3に示す遊星歯車タイプの選択をします(プラネタリー型,ソーラー型,スター型の増減速,不思議3K).


(1) 遊星歯車の個数は,1~21です.
(2) 歯数は,直接入力する方式と,速比から計算した歯数一覧(図5.5)から選択す
    る方式があります.
(3) 中心距離よりモジュールの計算,またはモジュールより中心距離の計算をす
    ることができます.
(4) 転位係数の計算は,モジュールと中心距離からバックラッシが0になるように
    計算します.
(5) 法線歯厚減少量の入力.(デフォルト値としてJISバックラ ッシ標準中間値の
    1/2を表示します.)
(6) 歯先円直径はプロパティで設定した基準ラックの歯たけと転位係数から
    標準値を計算しますが,変更が可能です.
(7) 外歯車の歯元部の形状は,基準ラックによる創成運動によって生成する歯
    形です.内歯車の歯元は,入力R接続です.
(8) 歯車の歯先はRで作成することができます.
(9) 転位係数は,1種を変更すると残りの転位係数が連動して変化しますが,歯
    車それぞれ個別に入力することができます. 最適なクリアランス(歯たけの調
    整)と歯厚(転位係数の調整) の決定のため図5.6の歯厚,頂げき確認(補助設定)
    によって歯形を確認することができます.また,この画面によって,転位係数や歯
    先円直径を変更したきの歯形形状やクリアランス,干渉の確認をすることができ
    ます.この時点での歯形は歯面のみであり歯元形状は含まれていません.

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5.5 歯車寸法
  歯車諸元を確定後,各種計算結果を図5.7~図5.10に示します.この画面で,干渉,効率,クリアランス,バックラッシの確認をすることができます.


5.6 歯形作図
5.6.1 歯形図(2D)

  歯車のかみ合い図を図5.11,図5.12のように2次元図で表示します.操作画面によって,補助円や共通法線を表示することができますので歯面の接触位置の確認が容易です.歯車の回転角度を変え,拡大表示することができます.


5.6.2 1 歯かみ合い図
  1歯同士のかみ合いを図5.13の2次元図で確認することができます.この画面にて内歯車と外歯車の歯先と歯元部分の干渉をより詳しく確認することができます
(2Dかみ合い図ではキャリヤが公転するために確認が難しいことがあります).また,歯車の回転角度を変え,拡大表示することができます.


5.6.3 レンダリング
  歯車のかみ合いを図5.14,図5.15のように3次元図で表示することができX, Y, Z方向に回転させることができ図5.16に歯形レンダリングのコントロールフォームを示します.


5.7 すべり率グラフ
  すべり率グラフ(図5.17,図5.18)に,各ロールアングル(または直径)によるすべり率を表示します.






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5.8 歯車強度
5.8.1 強度初期設定

  強度初期設定画面(図5.19)で,金属材料と樹脂材料を選択することができます.許容応力のσFlimとσHlimを表中(図5.20)から選択します.または任意数値を入力することができます.
  トルク単位は「N・m」「N・cm」「kgf・m」「kgf・cm」「gf・cm」から選択することができます.


5.8.2 強度諸元入力
  強度諸元入力画面(図5.21)に各種数値を入力します.トルク,回転数は入力,出力のどちらでも設定可能です.


5.8.3 強度計算結果
  図5.22と図5.23に強度計算結果画面を表示します.強度計算は,効率やかみ合い率も考慮しています.金属歯車はJGMA401-01:1974,JGMA401-02:1975 に基づき強度計算を,樹脂材料の応力値は,温度,寿命などを考慮した材料の実験値を採用しています


5.9 ヘルツ応力グラフ
  ヘルツ応力グラフを図5.24および図5.25に示します.かみ合いが2点接触と1 点接触のヘルツ応力の違いを確認することができます.


5.10 その他
(1) 歯車の歯形を出力することができます.
● DXF ファイル    :2D,3D全歯かみ合い状態
● IGES ファイル    :3D(1歯)),(図5.66 に作図例を示します)
● TEXT ファイル  :2 次元1歯座標
(2) 寸法計算結果,強度計算結果,2D図,すべり率グラフ,ヘルツ応力グラフ
     を印刷することができます.
(3) 設計データを保存し,読み込みができます.

5.11 不思議遊星(3K型)
  太陽,遊星,内歯2個の合計4 つを使用した場合,減速比を大きくする機構として不思議遊星歯車機構がよく知られていますが不思議遊星歯車は計算が非常に面倒です.しかし,本ソフトウェアを使用することにより簡単に不思議遊星歯車を設計することができます.
  入力は太陽歯車,固定は内歯車1,出力は内歯車2のタイプの3K形のみを対象としています.内歯車1 と内歯車2の歯数の大小によって,同方向減速と逆方向減速が決まります.以下に設計例を示します.
5.11.1 歯車諸元の設定
(1) プロパティで,モジュール基準を選択します.
(2) 図5.3の遊星歯車のタイプで遊星歯車機構のタイプを不思議3K型を選択し
     ,図5.26の不思議遊星諸元に進みます.
(3) 設計減速比を135,遊星歯車の個数を3個と入力します.
(4) 歯数一覧画面を表示し,適切と思われる歯数の組み合わせを選択します.
     (図5.27 参照)
このときの選択条件として
● 実速比と設計速比の誤差
● 歯数が小さすぎず,大きすぎない
● 内歯車の歯数z3z4の間に「z1+2×z 2」の関係があるなどを考慮し選択しま
    す.
ここでは例としてz 1=20,z 2=31,z 3=82,z 4=85 を選択します.
(5)次にTab キーを押し順にα20,β20,m1 を入力します.モジュールを入力
    した時点で,図5.2初期設定の基準ラックに基づいて標準の中心距離と転
    位係数と歯先円直径と歯底円直径が決まります.
(6)中心距離が27.6686mm のために目的に応じて変更します.
    (中心距離基準入力の場合はモジュールの標準値を計算しますので,その
      後JIS規格のモジュールに後から変更することができます.)




















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    図5.26に諸元確定画面を示します.
(7)中心距離とモジュールが決定したあとは,歯たけ(クリアランスに影響)や     歯厚(強度やバックラッシに影響)の状態を確認し変更することができます     入力画面の「歯厚・頂げき確認」ボタ ンを押すと,図5.28の歯厚,頂げき     確認(補助設定)を表示し ます.こ画面を表示します.この画面で,歯形     を確認しながら転位係数や歯先円直径を変更することができます.理論     インボリュート歯形の接触や歯たけ,クリアランス,内歯車の干渉を確認し     問題がないためこのまま歯車寸法を確定します.

(8) 図5.29~5.31に示すように寸法計算結果画面の効率やかみ合い率やすべり
    率を確認します.本例の不思議遊星の効率は, 図5.32に示すように73.1%とな
    ります.
(9) また,外歯車と内歯車の干渉状態を実際に1歯かみ合いによってどの程度余
    裕があるかを確認します.
(10)例題の場合,モジュール1の寸法が決まりましたが,強度計算により大きさを
    変えなければならない場合があります.その場合には歯幅を変更したり,転位
    係数はそのままでモジュールや中心距離や歯先円直径をn倍するなどして対
    処します.回転比が大きくなるとトルクの比率も大きくなるために強度計算は
    慎重に行う必要があります.


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5.11.2 歯車かみ合い図
  図5.33にかみ合い図を示します.図5.34の拡大図で遊星歯車に2つの内歯車がかみ合っている様子が良く解ります.また,図5.35に示す歯形レンダリングで不思議遊星のかみ合い回転の様子を観察することができます.


5.11.3 平歯車不思議遊星の例
(1) 歯車強度計算やすべり率そしてヘルツ応力グラフは,遊星歯車と同様に計算することができます.(説明省略)
(2) 平歯車の不思議遊星歯車の作図例を図5.36に示します.


5.12 少歯数(オプション)
  歯数が4歯以下の遊星歯車を設計することができます.最小歯数は1歯です.少歯数の場合は,正面かみ合い率が小さくなるため,ねじれ角を大きくする必要があります.
以下に太陽歯数が1,遊星歯数が2,内歯車の歯数が5の遊星歯車の作図例を示します.


5.13 ダブルピニオン(オプション)
  図5.2プロパティでダブルピニオンを設定します.以下に設計例を示します.


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  歯形データファイル出力や,すべり率グラフなどは基本ソフトウェアと同じです.

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5.14 不等配置遊星歯車(オプション)
Planetary gear and Mechanical paradox gear design system


5.14 1 不等配置遊星歯車の概要
  Planetary gear design systemのオプションとして「不等配置遊星歯車」を設けました.

5.14 2 不等配置遊星歯車の設計例
  プラネタリー型(減速)の不等配置の設計例を以下に示します. 図5.51の場合,等配置の条件では太陽歯数15,遊星歯数21,内歯車歯数57となります.ここで内歯車歯数を56とする場合は,図5.51の不等配置の設定をとすることで計算可能となります.


  内歯車の歯数を56に変更した入力画面を図5.52に示します.モジュールは図5.51と同じくmn1.5にしていますので内歯車の転位係数が少し大きくなっています.例題では,はすば歯車について示していますが,平歯車も設計することができます.
  また,[歯厚・頂げき確認]の機能も使用可能ですが,ここでは説明を省略します.詳しくは図5.6をご覧ください.図5.53~5.55に寸法結果等を示します.


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  ツールバーのをクリックすることで図5.56を表示します.不等配置の表示は,図5.56の[A1]歯車が基準歯車となります.また,不等配置角度は任意に入力することができませんので図5.57の[B]に示す角度表の中から選択します.遊星歯車の配置角度は,例題の場合,71種類存在します.   図5.56の[最小配置]をクリックすると[A2]歯車と[A3]歯車の歯先円が接することがないように配置した図を図5.58に示します.
  今,図5.57の[B]の角度の中から2番目の10.1408度を選択した場合の歯形かみ合いを図5.59に,[C]の拡大図を図5.60に,また,歯形レンダリングを図5.61に示します.

その他,強度計算,歯形データファイル出力などは基本ソフトウェアと同じです.遊星の個数を5としたときの計算例を図5.62~5.64に示します.


5.15 歯形データファイル出力
  生成した歯車の歯形は図5.65でファイル出力することができます.図5.66および図5.67にCAD作図例を示します.


5.16 HELP機能
  操作方法を知りたい場合は[HELP]機能を使うことができます.


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