[44] SS-Worm gear design system


44.1 概要
  一般に使用されている円筒ウォームギヤは,図44.35ように接触歯数が少ないため大きな負荷容量を得ることができません.これを解決するため図44.37のようなヒンドレーウォームギヤや,図44.39のようにホイールをインボリュート歯形とした鼓形ウォームギヤがあります.しかし,ヒンドレーウォームギヤは,ウォームもホイールも歯形が特殊であり,また,図44.40ではかみ合い歯数を多くするということは可能ですが,ホイールの歯たけ方向の線接触ですから大きな歯面応力に耐えるには限度があります.
  そこで,図44.35のホイールで,かみ合い歯数を多くできるウォームであれば,接触面積が広くすることができるため歯面負荷容量の増大を見込めることができます.このようなウォームギヤとして,ホブ加工を施したホイールとかみ合うウォームの歯形を持つSS-Worm gear(Standard wheel and Special worm)ソフトウェアを開発しました.図44.1にソフトウェアの全体画面を示します.

44.2 ソフトウェアの構成
  SS-Worm gear design systemの構成を表44.1に示します.表中の○は基本ソフトウェアに含まれ,◎はオプションです.


44.3 初期設定
  図44.2に初期設定画面を示します.ここで設定するウォーム形状は,鼓形と円筒形を選択することができますが,この形状は.外形を表しているもので歯形ではありません.
  歯形計算時の分割数は,図44.2の参考図ようにホイール歯面,ホイール歯幅,ウォーム断面,ウォーム歯幅の分割数を設定することができます.分割数を大きくすることで歯形を密に生成することができますが,その分,計算時間を要することになります.


44.4 歯車寸法
  図44.3に歯車寸法の設定画面を示します.まず,入力基準は歯直角と軸平面基準を選択することができますが,ここでは,歯直角基準での例を示します.モジュールから歯厚減少量までは円筒ウォームと変わりはありません.
  Worm鼓形外形偏心量(E)は,図44.4に示すようにウォームを鼓形とするときウォーム外形を調整するためのものです.


44.5 ホブ寸法
  ホイールの歯形を生成するためのホブを設定します.ホブ寸法は,図44.5(a)のようにホブ条数とホブ基準円直径を設定することによりホブの取り付け角や取り付け中心距離が決まりますので,クリアランス(ホイールとホブ刃底)を変更するとホブの刃元のたけ,およびホブ刃底円直径が変化します.
  一方,図44.5(b)の任意設計では,取り付け角や取り付け中心距離を任意に設定することができますので,ホイールの歯形,歯すじを変更することができます.この操作により歯当たり調整をすることができます.

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44.6 組図
  図44.6にホブとウォームとホイールの組図を,図44.7にホブとホイールのかみ合いを示します.また,図44.8にウォーム外形寸法(鼓形状)を示します.


44.7 歯形修整
  歯の接触を44.8歯形レンダリングで確認し,歯当たりを調整したい場合に歯形修整を行います.歯形修整は,図44.9 及び図44.10のようにウォームとホイールそれぞれに歯形方向,歯すじ方向の修整を設定することができます.
  例えば,図44.11のA 部ではホイールの側端部まで接触していますが,これを図44.9でホイールの歯形修整,歯すじ修整を施すことにより図44.13のようにホイール歯幅中央に接触させることができます.また,歯面修整を与えないで歯当たりを調整する方法は,図44.5(b)でホブの取り付け角を変更することで,歯当たり
位置を調整することが可能です.詳しくは44.10歯当たり調整をご覧ください.


44.8 歯形レンダリング
  歯形レンダリングでは,歯のかみ合いやホイール加工ホブを確認することができます.
  無修整歯形の歯形レンダリングを図44.11に示しますが,この図の方向や拡大,縮小を図51.12で行うことができます.また,かみ合い誤差(X,Y,Z 軸)や回転誤差,そして交差角誤差を与え,そのときの歯当たりを確認することができます.また,図51.12の右上にある,かみ合い回転機能では,歯車を連続回転させることができますので,かみ合い変化を把握することができます.

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  歯形修整を与えたホイールとのかみ合いは,図44.13(a)に示すようにホイール歯幅中央での歯当たりを呈しています.また,図44.13(b)は,ウォームとホイール,そしてホイール加工用ホブ(運動軌跡)を全て表示したものです.


44.9 中心距離変化の影響
  円弧系歯形は中心距離の変化に敏感であることから,図44.13(a)のかみ合いが,中心距離変化および軸角変化に対し,どの程度影響を及ぼすかを確認します.
  図44.13(a)は,理論中心距離で且つ,軸角誤差(⊿φ)が無い場合の歯当たりで4~5歯接触していますが,中心距離を+0.1mmとした図44.14(b)および図44.14(b)(⊿a=+0.1mm,⊿φ=+0.1°)では2~3 歯しか接触していません.しかし,図44.15(a)のように軸角を⊿φ=+0.36°としても歯当たりには大きな変化はありません.このことよりSS-Worm gear は,中心距離変化には敏感ですが,軸角誤差には鈍感であることが解ります.一方,図44.15(b)の円筒ウォームギヤ(歯車諸元は図44.3 と同じ,K形ウォーム砥石直径=300mm)の接触歯数は,1~2 歯です.また,接触模様を見ると,円筒ウォームギヤは,ホイールの歯すじ方向ですが,SS-Wormgear は,ホイールの歯たけ方向の接触であるため,潤滑には有利な接触であると言えます.


44.10 歯当たり調整(任意設計の例)
  歯面修整を施さないで歯当たりを調整する方法として図44.16のようにホブ(φ50mm)の取り付け角を故意にθ=2°として加工し,ウォームのみに歯形・歯すじ修整を与えた例を示します.
  ウォームの歯形・歯すじ修整は,図44.17のようにウォームの右側だけに修整(図44.10参照)を与えると,図44.18のようにホイールに歯面修整を与えたような歯当たりを得ることができます.


44.11 歯厚
  SS-Worm gearの歯厚は,図44.19で計算することができます.測定ピン(球)は,標準値を表示しますが,任意に設定可能です.ウォームの歯厚測定には図44.20(b)のようにピンを用い,ピンからピンまでの距離を計測します.また,ホイールは,図44.21(b)のように球を用い球から球までの距離を計測します.

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44.12 歯形出力
  SS-Worm gearの歯形は図44.22の歯形出力フォームでウォームとホイールの歯形(3D-IGES)を出力することができます.
  図44.23 にCAD作図例を示します.また,ホブ歯形も2D-DXFファイルで出力することができます.


44.13 ホブを基準とした設計(オプション)
  既存のホブでSS-Worm gear を設計する場合,図44.24でホブを与えます.
ここでは,例題として,ホイール(樹脂)とかみ合うウォームの例を示しますが,ホイールが樹脂でウォームが鋼のため強度バランスを考慮してホイールの歯厚を太く,ウォームの歯厚を薄くしています.
  歯車寸法(図44.25)およびホブ寸法(図44.26)の設定は,標準設定方法と同じです.


  ここでは,ウォームの形状を,図44.2初期設定で円筒形としていますので,図44.27の組図や図44.28歯形レンダリングでウォームの外形は円筒形状となっています.また,図44.29にCAD作図例を,図44.30および図44.31に歯厚計算結果を示します.

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44.14 回転伝達誤差解析
  SS-Worm gearの伝達誤差解析の設定を図44.32で行い,図44.33および図44.34のように回転伝達誤差,フーリエ解析をすることができます.
  中心距離誤差と交差角誤差を共に0 とした場合の回転伝達誤差はTE=0.98μmですが, 図44.32のように中心距離を0.03mm離し,交差角誤差を+0.01°としたとき,回転伝達誤差はTE=1.43μm となります.ただし,伝達誤差解析は,歯形の分割数に影響を受けるため図44.2の分割数を約1.5倍にして解析しています.


44.14 その他のウォームギヤ
  ウォームギヤは,[44]SS-Worm gearの他に,図44.35~44.42 のものがあり種々使い分けをすることができます.

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