[42] Skiving cutter design system


42.1 概要
   円筒歯車(外歯車,内歯車)の歯切り工法の一種であるパワースカイビングは1910年に特許が成立して100年が経過しましたが,近年,この工法が見直され国内外で専用機が上市されるようになりました.また,歯車加工も歯切り盤ではなく近年,マシニングセンタでスパイラルベベルギヤなどや特殊な歯車も加工されるようになっています(カタログ(vol.16),41頁写真).
   パワースカイビングは,工具の取り付け角(交差角,テーパ角)と工具の歯形さえ決まれば高機能のマシニングセンタで加工することができます.Skiving cutter design systemは,歯車諸元と工具の取り付け角から工具(ピニオンカッタ)の歯形を生成することができるソフトウェアです.また,生成した刃形を近似インボリュート刃形として生成することができます.図42.1に全体画面を示します.

42.2 ソフトウェアの構成
   Skiving cutter design systemの構成を表42.1に示します.表中の○は基本ソフトウェアに含まれ,◎はオプションです.
適応歯車:インボリュート平,はすば歯車(外歯車,内歯車)


42.3 歯車寸法
  被削歯車を内歯車としたとき歯車諸元は図42.2および図42.3のように設定します.転位係数は,直接入力する方法と,またぎ歯厚,オーバーボール(ビトゥイーンボール)寸法があります.なお,外歯車の例は42.11に示します.


42.4 工具寸法
   加工工具(ピニオンカッタ)の諸元を図42.5に示します.ここでは,歯車のねじれ角26.5°に対し,加工時の公差角をφc=20°としたときの例を示します.また,カッタの形状,位置,逃げ角の参考図を図42.5a,42.5bに示します.
   本ソフトウェアでは,交差角φc,テーパ角φtで工具を取り付け,図42.2の歯車を加工するときの工具刃形をすくい角や側面逃げ角を考慮して生成します.なお,はすば歯車加工時のピニオンカッタには,刃付け研磨が容易となるよう横すくい角(刃付け角)は与えないものとします.


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42.5 歯形(歯車,工具)
   歯車歯形を図42.6に,ピニオンカッタの刃形を図42.7に示します.図42.7の青線刃形は,図42.8に示すピニオンカッタの加工端面の刃形であり水色線はピニオンカッタの上面の刃形を示します.歯形図には拡大,縮小,距離計測機能があります.


42.6 組図(2D)
   組図を図42.9に示します.加工座標値の工具ポイント(A, B, C)は図42.10 に示すように歯車の中心を(0,0,0)原点としています.

42.7 歯形レンダリング
   歯形レンダリング(図42.12~42.15)では歯車とピニオンカッタのかみ合いを確認することができます.補助機能として工具のX,Y,Z 方向の移動や回転機能がありますので図42.13のように工具と歯車のかみ合い(切削)の関係を工具刃を回転させながら確認することができます.また,図42.15のようにピニオンカッタのみを表示することもできます.


42.8 歯形創成図
   歯形創成図の設定画面を図42.15に示します.ここでは,粗加工時の工具切り込み量を5mm,仕上げの切り込み量を6.75mmとしたときの歯形創成図を図42.16 に示します.


42.9 歯形出力
   歯車歯形と工具刃形をDXFファイルおよびIGESファイルで出力することができます.図42.17に歯形出力設定画面を,図42.18に工具のCAD作図例を示します.

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42.10 近似インボリュート刃形
   図42.18で生成した刃形をインボリュートとして近似することができますので,工具を発注(製造)する際,容易に扱えることができます.本例の図42.18の刃形は,図42.19のように左刃面の場合,圧力角はαn=20.6265°,ねじれ角はβ=8°30'で近似することができます.近似した刃形と理論刃形との違いは,図42.20に示すようにカッタ刃先付近で0.0007mmと僅かです.


42.12 切り屑形状(オプション)
   図42.21 の加工条件ででスカイビング加工したときの切り屑形状を図42.22~42..24 に示します.図42.21 の加工条件では工具の送り量,交差角および切り込み量を任意に設定することができます.図42.22 および図42.23 の切り屑形状
は,工具の1 刃が,切削を初めてから終わるまでの形状を示しています.図42.24 は歯車とすくい面の状態を示し,図42.25 は2D切削厚さを100倍で示しています.


   図42.21 加工条件ので切り屑形状を図42.24のようにcsv ファイルに出力することができます.


42.13 工具兼用(オプション)
   図42.18 の工具で図42.2 と異なる歯車を加工するとき,この工具でどこまで兼用できるかを計算します. 図42.25 の歯車は,図42.2 の歯車のモジュールと圧力角は同じですが,歯数とねじれ角が異なります.また,工具の取り付け角を図42.26 とすると図42.27 および図42.28 を表示することができます.そして,図42.28 の□部分を拡大して歯車諸元(図42.25) の歯形との比較をすると図42.29 のようにその差は1.2μmであることが解ります.同様に左歯面を計測すると0.7μm です.

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   テーパ角を調整することにより,歯形誤差を微小に抑えることができますので工具の兼用が可能です.ただし,本例の場合,極めて良く一致していますが,諸元や条件によっては良く一致しない場合もあります.そして,図42.26で設定したときの歯形レンダリング表示(図42.27)や,加工条件(図42.21)に基づく切り屑形状(図42.22)も解析することができます.
   ここでは内歯車の例題を示しましたが,外歯車も同様に計算することができます.なお,工具兼用は図42.30 のように第2画面で計算します.



42.14 外歯車の例
   外歯車も内歯車同様,工具刃形状,切り屑形状,インボリュート近似刃形を計算します.計算例を図42.31~42.43に示します.


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42.15 面取りC,R(オプション)
   歯車の歯先面取りが必要な場合は,工具に面取り形状を与えることができます.図42.2の歯車諸元の面取り設定は,図42.44のようにC面,R面を選択することができます.


42.16 HELP機能
   操作方法を知りたい場合は[HELP]機能を使うことができます.図42.45で目次を選択することもできますし,図42.46のように不明な内容がある場合,その画面をアクティブとして[F1]を押すことで図42.46の説明画面を表示します.


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