[41] 内歯ねじ歯車設計システム


41.1 概要
   外歯車同士のねじ歯車対は,両歯車ともインボリュート歯形であればかみ合いは成立しますが,内歯車と外歯車に軸交差角を与え,ねじ歯車としてかみ合わせた場合,内歯車と外歯車がともにインボリュート歯形であれば歯面に大きな3次元干渉が発生するため,かみ合いが成立しません.しかし,本ソフトウェアは,内歯車と外歯車に任意の軸角を与えた場合であってもかみ合いが成立する外歯車の歯形を生成することができますので内歯ウォームギヤ(カタログvol.15[39])と同様に外歯車を工具として扱うこともできます.また,本ソフトウェアは,内歯ウォームギヤと類似のものですが,内歯のねじ歯車として設計できるようにしたものです.

41.2 内歯ねじ歯車
   図41.2に歯車諸元の入力画面を示します.諸元の入力範囲は,0.1≦mn≦50, 10≦z2≦999, 5°≦αn≦40°, 0°≦β≦50°です.転位係数入力後に[標準値]ボタンをクリックすると歯先円直径からバックラッシまで標準値が入力されます.そして[確定]ボタンで図41.3を表示します.
   図41.4に内歯ねじ歯車のかみ合いを示しますが,この外歯車の歯形はインボリュート歯形のため大きな3次元干渉が発生しています.しかし,3次元干渉を考慮した歯形のかみ合いは図41.5に示すように綺麗な接触線が表れています.そして,生成した外歯車の歯形はCADファイルに出力することができます.



41.3 内歯ねじ歯車(工具)
(1) 図41.2のクリアランスやバックラッシが0であれば外歯車を工具(または,ラッピング用歯車)と見立てることができます.本例では内歯車のねじれ角が20°,外歯車(工具)のねじれ角が30°の歯車諸元を図41.6に示しますが,クリアランスckaは,歯車の歯先と工具の隙間を0.5mmとして与えています.また,本ソフトウェアではねじれ角から決まる交差角に対し±10°の補正角度を与えることができますので本例では交差角を15°としています.さらに,中心距離も任意に設定することができます.図41.6の[確定]ボタンを押すと図41.7の内歯車寸法を表示します.


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(2) 3次元干渉を考慮した外歯車(工具)の歯形と内歯車のかみ合いは,図41.8 のように左右歯面において綺麗な接触線を確認することができます.もし,3次元干渉を考慮していない歯形であれば,図41.9のように大きな干渉が発生しますので,かみ合いません.


(3) 図41.10に外歯車(工具)の断面歯形を示します.図41.11に外歯車を工具と見立てた加工後歯形(青色)と内歯(赤色)の重ね合わせ図を示します.また,正面歯形で確認すると図41.12のように綺麗に重なっていることが解ります.


(4) 外歯車(工具)の歯形を計算する際,歯幅方向に41分割としたため,断面1の歯形と歯幅中央の断面21の歯形を図41.13に示します.両者の違いは歯先円直径が異なり,また,断面1の歯形は,左右非対称歯形です.


(5) 生成した歯形をCADデータとして出力することができます.図41.14の歯形出力により作図した3D歯形の例を図41.15に示します.また,外歯車(インボリュート)と断面21の歯形の重ね合わせを図41.16に示しますが,インボリュート歯形と工具歯形には大きな違いがあることが解ります.

(6) 生成した外歯車(工具)の歯形(断面21など)を研削する場合,図41.14 の「2 次元歯溝text」で歯形ファイルを出力し,図41.17のようにYASDA GT-30(カタログ116 頁,[104],機械の紹介)で研削することができます.

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(7) 次に,外歯車(工具)の歯幅を1mm(図41.6の外歯車の歯幅)としたときのかみ合いを図41.18に示します.また,外歯車(工具)を軸方向に移動したときの歯当たりを図41.19に示しますが,歯幅の位置の違いに関わらず同じ接触模様を示しています.


(8) 内歯車が平歯車の場合も,はすば歯車と同様に計算することができます.内歯ねじ歯車(mn=2, z1=130, z2=35, α=20, β=0, x1=0.2,da1=256.8, df1=265.8)のかみ合いを図41.20に示します.また,外歯車をインボリュート歯車とした場合のかみ合いを図41.21に,3次元かみ合いとコントロールフォームを示します.


41.4 外歯車(工具)の測定(オプション)
   図41.16に示す工具歯形(断面21:緑線)を図41.17のように成形研削した場合,歯形検査を行う必要があります.そこで,歯車測定機を用いて外歯車(工具)の各断面の歯形を測定する方法を以下に示します.
   図41.16の工具歯形(断面21)の歯形はインボリュート歯形に近い形状をしていますのでmnとβは設定値とし,αが解れば歯車測定機で歯形誤差を測定することができます.その計算画面を図41.22に示します.
   ただし,本例の場合,歯たけ中央の歯形はインボリュート歯形に一致していますが,歯先および歯元付近の外歯車(工具)歯形はインボリュート歯形と比較して約5μm の違いがあります.この歯形の違いは,図41.23に示すように距離計測で確認することができますので検査結果で配慮する必要があります.さらに,外歯車(工具)の歯先部は内歯車の歯底部を生成しますので外歯車(工具)の歯先部は除外する必要があります.なお,断面21は,左右対称歯形ですが,これ以外の断面は,図41.24に示すように左右非対称歯形です.


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