[34] Hyp-Trochoid gear design system


34.1 概要
   Hyp-Trochoid gear design systemは,トロコイド曲線歯車(外歯車×内歯車)を設計するソフトウエアです.かみ合い率はインボリュート歯形に比して数倍あり,歯形設計,歯のかみ合いを計算することができます.この歯車の歯形はトロコイド曲線であるため,すべり率はインボリュート歯形に比べて小さく,且つ,ほぼ一定であるため動力損失の低減に有効です.また,本例(図34.3)のようにピニオンを自公転させてかみ合う歯車とすれば,1対の歯車で高減速比(本例i = 1/49)とすることができます.

34.2 設計・歯形
   内転トロコイド歯形を図34.2の考え方で生成します.ピッチ円半径(Rp)に接しながら滑りなく転がり円半径(Rr)を回転させ,運動する軌跡半径(Rm)上の1点が描く軌跡を歯形座標としています.なお,Rm=Rrとすると,内転サイクロイド曲線です.
  歯数差を小さく(1~2歯差)してピニオン(外歯車)の自公転を利用して速比を大きくすることができます.しかし,かみ合い率を1以上とする設計とするための数値を直接入力することは非常に困難であるため,本ソフトウエアではモジュールと歯数の入力後,かみ合い率を基準にして設計基準値を表示する機能を有しています.


34.3寸法設定
   本例では,ピニオンを自公転させてかみ合う歯形の生成例を示します.図34.3上部の青抜き枠の組み合わせ(外歯車;出力,内歯車;固定,腕;入力)として,モジュール1,外歯車歯数 (z1=50),内歯車歯数(z2=51)としたとき,かみ合い率を満足させ,且つ,内転トロコイド歯形の転がり円半径(Rr)や軌跡半径
Rm)を設定する場合,図34.3でモジュール,歯数入力後, により設計基準値を決定することができます.図34.4は,最小かみ合い率を3.0としたときの組み合わせであり,この中から11番目の寸法を選択すると図34.3の紫色の項目は,図34.5に示す値となります.


   図34.5の大径部丸み半径(ra)や小径部の丸み半径(rf)そして歯厚減少量(⊿St)を与えることにより歯形や各部寸法が決まります.その結果を図34.6に示しますが,歯先Rを与えることにより,かみ合い率はε=2.425に低下します.また,外歯車の歯厚を小さく(0.20mm)し,内歯車の歯厚を大きく(0.18mm)してバックラッシjt=0.02mmを与えています.回転比(本例の場合1/50)やクリアランス,干渉発生の有無を表示します.

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34.4 歯形図
   図34.5で設定した歯車諸元に基づき内転トロコイド歯形を生成し図34.7のように作図します.図34.8は,図34.7のかみ合い部Aの拡大図(図中の3歯が同時接触)であり,図34.9は同じくBの拡大図です. かみ合い図(2D)では,図34.10のように距離計測(歯先間距離が0.096mm)をすることができます.

   図34.11および図34.12に歯形レンダリングを示します.この図では図34.3で設定した歯車の組み合わせに応じて歯車が回転します.また,図34.12に示すように接触線を観察することができます.


34.5 オーバーボール寸法
   生成した歯形の管理のためオーバーボール(ビトイーン)寸法を図34.13および図34.14のように計算することができます.


34.6 すべり率
   本例の内転トロコイド歯形のすべり率は,図34.6の寸法計算結果に示すように

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最大接触直径ではσh=0.0695 であり,最小接触直径ではσt=0.0192で,歯形位置(直径)におけるすべり率の変化 は,図34.15で知ることができます.この図から本例の内転トロコイド歯形のすべり率は,ほぼ一定であることが解ります.


34.7 強度計算
   強度計算は,図34.16に示す強度設定画面でトルク,回転速度,過負荷係数等を入力します.材料の許容応力は,直接入力するか,または,図34.16の材料選択表を用いて設定することができます.


   歯の曲げ強さは,歯たけ中央位置における歯形の曲率半径を基本とします.また,最弱断面歯厚は30度接線法(内歯は60度接線法)により決定し,歯先に荷重が作用するものとして歯元に発生する応力を計算します.さらに,曲率半径,曲げ高さそして最弱断面歯厚は,図34.17の歯形図で確認することができます.
   歯面強さも曲げ強さと同様に歯たけの中央位置における歯形の曲率半径を基本とし,発生ヘルツ応力を計算します.曲げ強さおよび歯面強さは,材料の許容応力と発生する応力の比としています.図34.17に強度計算結果例を示します.


34.8 歯形出力
   生成した歯形は,図34.18の歯形出力機能によりCADファイルとして出力することができます.作図例を図34.19~34.20に示します.


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