[23] Hob Chip (切粉形状シミュレーション)


23.1概要
  Hob Chipは,ホブ切削時における切粉の切取り形状や切取り厚さの計算や,ホブ切れ刃位置における切取り量をシミュレーションすることができるソフトウェアです.図23.1に全体画面を示します.

23.2歯車諸元入力
  歯車諸元を,図23.2に示します.加工方法は,図23.3に示すように「両歯面仕上げ」,「片歯面仕上げ」,「1回削り」の3通りがありますが,本例では1回削りとして計算を進めます.加工歯厚は,「またぎ歯厚」,「オーバーピン寸法」,「円弧歯厚」の内から選択します.本例では,図23.4のように,またぎ歯厚を21.734mmとして計算を進めます.


23.3ホブ諸元入力
  ホブの種類は,「標準」,「セミトッピング」,「プロチュバランス」,
「プロチュバランスセミトッピング」と「転位ホブ」に対応しています.本例では「プロチュバランスホブ」を使用します.図23.5で設定するホブの各部寸法は,図23.6の[参考図](刃先部詳細)で,また,入力後の刃形形状は図23.7で確認することができます.


23.4歯形図
  ホブ加工後の歯形を図23.8の歯形選択画面で歯形創成図(図23.9),歯形軌跡図(図23.10),歯形レンダリング(図23.11)の作図ができます.これらの歯形は,図23.5で設定したホブを使用して作図したものであり図23.10の歯形軌跡図からも明らかなようにホブのコブ形状を考慮した歯形図となっています.


  ホブ加工後の歯車寸法を図23.12に示します.本例の場合,面取りホブでないため面取りは発生していません.また,インボリュート開始径(歯面開始径)43.6343mmは,図23.13の歯形軌跡拡大図で確認することができます.

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23.5 ホブ加工
23.5.1 ホブ加工条件
  ホブ加工の送り方向と送り量を図23.14で設定します.本例ではコンベンショナルカットとし,送り量は1mm/revとしています.ここでホブの取り付け角度を変更(オプション)し,切り屑の形状の変化を計算することもできます.(23. 6参照)


23.5.2 切削体積
  ホブ加工後の全切削体積と同時切削体積のグラフを図23.15に示します.このグラフは,横軸を切れ刃番号,縦軸を切削体積(mm3)にしたグラフです.同時切削体積とはホブの左右の角部が同時に切削(ワークと接触)するときの切削体積です.ここでの切削体積は,ある1つの切れ刃がホブ1回転当たりに1溝を削る体積です.
  切れ刃番号は,ホブの創成中心刃を0として負側の番号は先行刃(創成中心刃より前に存在する切れ刃)を意味し,正側の番号は後続刃(創成中心刃より後に続く切れ刃)を意味します.本例の場合,切れ刃番号は-18 から+17までを検討切れ刃としています.
  図23.15のグラフより,本例の場合には切れ刃番号-2の刃が全切削体積も同時切削体積も最大となります.図23.16に切削体積表を示します.


23.5.3 切取り厚さ
  図23.15の切削体積で最大となる切れ刃番号である-2に着目すると,切取り形状と切取り厚さは図23.17となり,最大切取り厚さは114.3μm となります.しかし,切取り厚さが最大となるのは図23.18に示すように切れ刃番号が-5であり,その厚さは121.3μmです.


23.5.4 歯溝図
  図23.19~23.26に,歯溝を基準として切れ刃が削り取る形状を切れ刃番号-15 から+13までを示します.切れ刃番号と切り粉(uncut chip)形状の変化が良く解ります.

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23.5.5 ホブ刃形と切り粉の関係
  切削体積が最大となる切れ刃番号-2において切取り厚さの大きい切れ刃位置を図23.27で確認すると,表の最上段列に示すホブ座標番号の35番目となります.このホブ座標番号の35番目は,図23.28のホブ刃先の赤丸の点で示されます.また,切取り厚さが最大となる切れ刃番号が-5では,ホブ座標番号の43番目となります.従って,本例では,切取り体積と切削厚さから推測すると,この位置(図23.28,図23.29)でホブの摩耗が大きくなることを予測することができます.


23.6 ホブ取り付け角度誤差(オプション)
  ホブに取り付け角度誤差を与えて切りくず計算をすることができます.誤差角度の入力範囲は±2度ですが,大きい誤差角度になると計算できないことがありますので適度な誤差角度を入力する必要があります.
  ホブの取り付け角度を変更することにより切り屑の形状が変化するためドライカットの切削に有効です.
  ホブの取り付け角度を変更しても,はすば歯車のリードが変化することはありません.ただし,加工後の歯形は圧力角が変化します.また,転位ホブ歯切りとは異なるため入力した歯車寸法とはなりません.図23.30にホブ取り付け角度誤差の設定画面を示します.


23.7 ソフトウェアについて
  Hob Chipは,元九州大学工学研究院知能機械システム部門の梅崎先生が開発した「ホブ切りにおける切取り厚さ数値解析プログラム」を計算プログラムとして使用しています.

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