[22] CT-FEM ASM(非対称歯形歯車応力解析)


22.1 概要
  非対称歯形歯車は,ギヤの大きさや材料を変更しないで歯面負荷容量を増大させることができます.高圧力角歯形は標準圧力角に比べ,ヘルツ応力は低下し,摩擦係数およびすべり率は小さく,そしてフラッシュ温度を低く抑えることができます.詳しくは[付録H]をご覧ください.
  CT-FEM ASMは,非対称歯形歯車(高強度歯車)のFEM応力解析ソフトウェアです.CT-FEM Opera ⅲと同様フラッシュ温度,摩擦係数,油膜厚さ,スカッフィングや摩耗の発生確率そして寿命時間の計算ができ,また,歯面端部接触解析や最適歯面修整機能も付加しています.図22.1に全体画面を示します.

22.2 ソフトウェアの構成
  CT-FEM ASMの構成を表22.1に示します.表中の○は,基本ソフトウェアに含まれ,◎はオプションです.
適応歯車:インボリュート平,はすば歯車(外歯車,内歯車)


22.3 基準ラックの設定
  図22.2に設定画面を示します.
・歯車の組み合わせ :外歯車×外歯車,外歯車×内歯車
・基準ラック             :並歯,低歯,特殊
・歯先円決定の方式 :標準方式,等クリアランス方式


22.4 歯車寸法
  歯車寸法は,各部寸法,かみ合い率,すべり率,歯厚などを計算します.アンダーカットが発生している歯車のかみ合い率は,TIF(True Involute Form)径を基準にかみ合い率を決定します.また,歯先にC面や丸みがある場合はCまたはRを考慮したかみ合い率を算出します.
  (1)中心距離と転位係数の関係は,以下の3種類です.
      <1>転位係数をピニオンとギヤに与え中心距離を決定
      <2>中心距離を基準として各歯車の転位係数を決定
      <3>転位係数を無視して任意に中心距離を決定
  (2)転位係数の設定方式は,以下の3種類です.
      <1>転位係数を直接入力
      <2>オーバーピン寸法を入力して転位係数を決定
      <3>転位量を入力して転位係数を決定
転位係数の入力は,転位係数を直接入力方法以外に,歯厚を基準にして転位係数を逆算することもできます.なお,非対称歯形歯車の「またぎ歯厚」測定はできませんので転位係数の設定方式には含みません.図22.3に諸元設定画面を,図22.4~22.6に寸法結果を示します.図22.7に非対称歯形歯車のオーバーボール測定位置図を示します.

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22.5 かみ合い図
  図22.8に正面かみ合い図(左歯面接触)を示します.補助フォームで基準円直径や作用線を作図することができ,スクロールバーで歯車を回転させることができます.また,歯形を拡大することもできます.


22.6 かみ合いグラフおよびすべり率グラフ
  図22.9にかみ合いグラフを示します.このグラフでは横軸にピニオンの作用線長さを,縦軸にギヤの作用線長さを示していますのでかみ合いの関係が良く解ります.図22.9(a)の場合,ピニオンの接触直径が85.853mmのときギヤの接触直径は190.192mmです.また,そのときのピニオンの作用線長さは23.350mm で,ギヤは54.786mm です.さらに,図22.8 の正面かみ合い図と連動させることができますので歯のかみ合いも把握することができます.
  図22.10の回転角度計算(図22.9中の[逆算]ボタン)は,接触直径,作用線長さ,ロールアングルそして回転角度の関係を計算するための補助計算機能です.また,図22.11にすべり率グラフを示します.


22.7 歯面要素(入力2)
  図22.12に歯面要素設定画面を示します.ここではトルクとヤング率,ポアソン比そして歯形の分割数を設定します.ヤング率,ポアソン比をプラスチック材料とすることによりプラスチック歯車も解析することができます.解析歯形は1歯,3歯,5歯を選択することができますので,例題歯車のように全かみ合い率が大きい場合には5歯を選択します.また,ピッチ誤差を与えることができますので例題歯車では,ピニオンに6μmのピッチ誤差を与え解析する例を示します.


22.8 歯形歯すじ入力
  定型の歯形修整および歯すじ修整は各々3種類(Type1~3)あります.本例で与えるピニオンの歯形修整を図22.13に,歯すじ修整を図22.14に示します.ただし,ギヤは無修整とします.

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22.9 3D 任意歯面修整
  3D歯面修整は図22.15のように直接入力することもできますし,図22.13および図22.14で設定した修整を引き継ぐこともできます.図22.15は,図22.13と図22.14 で設定した修整を3D表示したものです(ギヤは無修整のため省略).また,この歯形をCSVファイルで出力することも,歯車検査結果データ(CSVファイル)を読み込むこともできます.


22.10 歯面要素3D 図
  図22.15で設定した歯形を3D図で確認することができます.補助フォームでは歯車を回転,ズームさせることができ,中心距離誤差や組み立て誤差角度を設定し,歯当たりを確認することができます.図22.16(a)は歯面修整を持つ歯形を表示したもので,(b)は,それに理論歯形(ピニオン赤色とギヤ青色)を重ねた合わせた図です.また,図22.17 に歯面要素メッシュモデルを示します.



22.11 歯面解析
  歯車諸元やトルクそして歯面修整を与えたときの歯面応力を解析します.解析角度は,1 ピッチ角度と最大接触角度の2種類あります.ここでは例題として図22.18 のように最大接触角(θmax=64.68°)を60分割し,食い違い角誤差をφ1=0.01°,平行度誤差をφ1=-0.001°として計算します.この軸角誤差は,負荷により軸受や歯車箱が歪んだときの誤差角であり,この原因により歯当たりが変化し応力分布に変化を生じさせます.


22.12 歯面応力解析結果
  歯面応力解析結果を図22.19に示します.解析の結果,図22.19(a)はピッチ誤差を与えているため同じ歯面応力分布となっていないことが解ります.同じく(b)は,最大応力を全歯に示したものです.


  歯面全体応力分布を図22.20に示します.図22.21 は,歯面応力の最大と最小を示したものであり,最大歯面応力はピニオン回転角θp=14.247°時であることが解ります.

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  歯面全体の応力分布(セル表示)を図22.22に示します.例題の場合,歯幅方向に98個(歯幅面取り部含む),歯たけ方向に70個(歯先面取り含む)の領域の応力を表示しますので歯面位置における応力値が解ります.また,ここに表示している応力値はCSVファイルで出力することができます.
  各々の回転角時の応力は,図22.23のようにピニオン回転角に応じた応力分布を連続して表示することができますので応力変化と接触位置を把握することができます.


22.13 フラッシュ温度,摩擦係数,油膜厚さ 他
  フラッシュ温度を計算するときの設定画面を図22.24に示します.ここでは,回転速度,歯面粗さの他に材料(熱伝導率)を選択します(図22.25).潤滑油の種類は鉱物油,合成油を選択することができますが,規格外の場合は,任意に動粘度や油の平均温度などを設定することができます.フラッシュ温度,摩擦係数,油膜厚さの計算結果を図22.26~22.33に示します.また,スカッフィング発生確率,摩耗の発生確率を図22.34に示します.


22.14 端部解析(オプション)
  22.11~22.13項ではインボリュート歯面について解析しましたが,ここでは歯先や側面部の端部解析(図22.35) を した結果を示します.
  解析の結果,図22.36のようにピニオン歯元とギヤ歯先にσHmax= 4204MPaもの大きな応力が発生します.フラッシュ温度はインボリュート歯面の解析では図22.26のように歯先部で42.8℃だったものが端部解析では図22.37のようにピニオン歯元で172℃に大きく上昇していることが解ります.

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22.15 FEM解析
  FEM解析するため図22.38でメッシュモデルを作成します.ここでは標準モデルでメッシュを作成しますが,設定の方法は歯形を精度で決める方法と歯形を分割数で決める方法の2通りがあります.メッシュ分割した歯形は,図22.39のように2Dメッシュモデルや図22.40の3Dメッシュモデルで確認することができます.また,3D-FEMメッシュ要素は座標と節点を図22.41のように表示することができます.

  メッシュモデルは図22.42のようにリム・ハブモデルとして生成することができますのでプラスチック歯車のような弾性率が小さい歯車には有効です.


  次に,図22.38で設定したメッシュモデルでFEM解析をする例を以下に説明します.
  図22.18の歯面解析設定で設定した角度(-28.578°~36.102°)を60分割していますので歯面応力が最も大きいθP=14.247°(図22.21)の角度を選択しFEM解析します.かみ合い角度内での曲げ応力の変化を知りたい場合は図22.43の□を全てチェックすれば60組の曲げ応力を計算することができます(解析数が多いため必要なかみ合い角度のみ選択し計算することが有効).
  解析する項目は,図22.45に示す応力,変位そしてひずみの3種類です.FEM解析結果を図22.45~22.48に示します.

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  図22.49の解析結果一覧表でピニオンの最大主応力の最大値σ1max= 525MPaの要素番号は31695ということが解りますので,この番号を図22.50の「点滅」に入力すると応力分布図(○印中でが点滅します)で確認することができます.
  FEM解析結果後,図22.51のように歯幅方向の任意の位置での応力を表示することができます.図22.51は歯幅中央位置(zd=-3mm)における応力を示しています。

22.16 寿命時間
  歯面応力解析およびFEM解析後に寿命時間を計算します.ここでは材料の歯面強さに対する許容応力値σHlim=2000MPaとした寿命時間を図22.52に示します.


22.17 回転伝達誤差(オプション)
  図22.18の歯面解析設定画面で与えた回転角度内での回転伝達誤差を図22.53に,フーリエ解析結果を図22.54に示します.


22.18 内歯車の解析(オプション)
  「外歯車×内歯車」の解析結果を図22.55~22.66に示します.ピニオンの歯面修整(図22.14)もトルクも「外歯車×外歯車」の例(図22.12)と同じにしています.

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22.19 最適歯面修整量解析(オプション)
  図22.14のように歯面修整を一様に決めるのではなくトルク,ピッチ誤差そして軸角誤差を考慮したとき歯面応力が最小となる修整量を決めることができる機能です.設計条件下での負荷容量を大きくすることができます.
  例として,図22.3歯車で図22.11のトルクとピッチ誤差,図22.18の軸角誤差の条件で計算 した最適歯面修整を図22.67および図22.68に示します.


  次に,図22.67の歯形で解析した歯面応力の図22.69および図22.70は,図22.20のσHmax=2364MPaに比べ28%低下し,図22.71のフラッシュ温度も図22.26に比べ3.6℃低下しています.

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